遺言書
遺言とは被相続人(遺言者)が行う、自身の死後の財産処分に関する意思表示のことをいいます。

遺言の特徴として、まず取引行為などのような意思表示の相手方が不要である単独行為であるという点、またその効力が発生するためには意思表示だけでなく、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という民法上定められた一定の方式が必要である要式行為であるという点が挙げられます。

このような特徴が遺言の効力発生時期の定めに影響しています。

1.遺言の効力発生時期

では遺言はいつからその効力が発生するのでしょうか。この点について、民法985条1項で「遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる」と定められているように、遺言の効力発生時期は被相続人(遺言者)の死亡時ということになります。これは遺言が先に述べたように意思表示の相手方を必要としない単独行為であることから第三者の利益を害する危険がなく、また遺言の趣旨が遺言者の意思の尊重にあることから、生前を効力発生時期としてしまうと、もし遺言者が翻意して遺言を撤回したいと考えた場合や遺言の内容を変更したいと考えた場合にかえって遺言者の意思に反してしまうということになるからです。

しかし例外的に遺言はその効力発生に一定の条件や負担をつけることができ、その場合は条件が成就した時や相続人が負担した義務を履行した時が遺言の効力発生時期となります。

前者の具体例としては、「相続人が結婚した場合に土地と建物を相続させる」や「妻に50万円を支払った場合に自動車を相続させる」などがあり、後者の具体例としては、「妻の生活の面倒をみてくれることを条件に相続人に土地を相続させる」などということがあります。

従ってこの場合相続人が結婚した場合、相続人が妻に50万円を支払った場合、妻の生活の面倒をみることを始めた時が遺言の効力発生時期となります。

2.遺言の無効・撤回

遺言は遺言者の意思を尊重し、その最終的な意思表示を確認するものであることから遺言者は自己の遺言をいつでも撤回することができ、その場合遺言は無効となります。そして遺言者が脅迫などを受けることのないよう遺言者が生前に遺言を撤回する権利を放棄することはできないことになっています。

遺言の撤回は遺言者の意思表示によって行われるのが通常ですが、それ以外にも、遺言者が生前に遺言の内容と相反するような財産の処分をした場合には遺言を撤回したものとみなされ、また遺言書が複数存在し、それぞれの内容が矛盾・抵触している場合には遺言書の日付が古いものが撤回されたとみなされます。
また、遺言者が故意に遺言書を失わせたり損壊したりした場合はその失われた部分に限り撤回したものとみなされます。

一方、遺言は法律上の権利義務を発生させる法律行為の一種であることから、遺言者に有効な意思表示を行う能力、すなわち自己の行為の結果を弁識することができる精神的能力が無い場合や、遺言の内容が犯罪行為、または著しく倫理に反するような公序良俗違反のものであるような場合、その遺言は無効となります。

このように遺言が無効となる事由や遺言が撤回された場合は効力発生時期にかかわらず遺言の効力が発生することはありません。

3.遺言の形式と無効事由

遺言は一定の方式を必要とする要式行為であるため、形式を欠いて無効となる場合があります。

自筆証書遺言の場合、遺言者が遺言の全文を自書しなければならず、そうでない場合は無効となります。また日付と氏名の記述、押印も必要で、これを欠く場合は無効となります。

また、相続人には一定の場合にその資格が失われる欠格事由というものがあります。具体的には遺言者に対して詐欺行為を行ったり脅迫したりして遺言を撤回させたり、その内容を変更させたり、また逆に同様の行為によって撤回や変更を妨げた場合などがこれに当たります。

さらに遺言書を偽造したり隠匿したり破棄したりした場合もこれに当たり、そのような行為をした者は相続人としての資格を失います。

以上のように遺言の効力発生時期は原則として遺言者の死亡時であり、例外的に条件付き・負担付の場合は、条件が成就した場合、負担義務が履行された場合が効力発生時期となります。

しかし無効事由がある場合、遺言の撤回があった場合は条件や負担義務の履行にかかわらず遺言は無効となり、その効力発生時期は問題となりません。